空冷エンジンとは?水冷エンジンとの違いや独特のフィーリングを考察

「空冷エンジンってなに?」

空冷エンジンとは、空気でエンジンを冷やす仕組みのものです。

昨今ほとんど見かけなくなってしまった空冷エンジン。

時代の変化によって、絶滅危惧種と化した空冷エンジンですが、現在その空冷エンジンが注目されているんです。

今回はそんな空冷エンジンについて、水冷エンジンとの違いや空冷エンジンならではの特徴に迫っていきます。

空冷エンジンとは

空冷エンジンとは、空気でエンジンを冷却するシステムが搭載されたエンジンです。バイクや車を問わず、エンジンは稼働すると触ることができないほど非常に熱くなります。しかし、エンジンを冷やさずに高温状態になると、オーバーヒートを起こしてエンジンがストップしてしまいます。そのため、エンジンを冷却する手段として、空気でエンジンを冷やすことを空冷式と呼び、空冷式が採用されているエンジンのことを空冷エンジンと呼びます。

空冷エンジンを搭載しているバイクでは、エンジンを外にむき出しにすることで走行風によって強制的にエンジンを冷やすことができます。こうした冷却方法は自然空冷式と呼ばれます。

しかし、空冷エンジンを搭載している車では、走行風による冷却を設計するのが難しいことから、ファンなどを搭載して空気で冷やします。例えば、ポルシェの空冷エンジンの場合、大きなファンがエンジンルームの中に搭載されています。こうした冷却方法は強制空冷式と呼ばれます。

こうした空冷エンジンは、シンプルな冷却構造であることから、部品数が少なかったり、低コストで製造することができたり、メンテナンスしやすかったり、といった機能的なメリットがあります。

水冷エンジンとの違い

空冷エンジンと水冷エンジンの違いは、そのエンジン構造にあります。

まず、水冷エンジンとは、エンジン自体を水で冷却するシステムを搭載したエンジンです。

水は空気よりも熱伝導率が24倍と高く、比熱(熱容量)も水の方が大きいことからエンジンの温度管理スペックを大きく向上するという理由で、現在ほとんどの車が水冷エンジンを搭載しています。

水冷エンジンは、熱がこもりやすいエンジンの燃焼室やシリンダーの周りに水通路となるウォータージャケットを設置し、高音になった冷却水は車の走行風などによって冷却され、エンジンと循環する仕組みになっています。

ちなみに、水冷エンジンで使われる水は、水道水のようなH2Oは使われておらず、「クーラント」とよばれる液体が使用されます。この「クーラント」と呼ばれる液体は、エチレングリコールを主成分とし、金属の錆や凍結などのリスクを抑えます。

GFDL 1.2, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19986334

こうした構造により、効率的なエンジンの冷却だけでなく、エンジンの騒音が冷却水によって響きにくいなどというメリットも持ち合わせています。
しかしその反面、冷却のための配管、循環装置などによる複雑な構造や部品数の増加、冷却水のメンテナンス、重量の増加、コストの増加などのデメリットも持ち合わせています。

空冷エンジンの課題

そんな空冷エンジンですが、今となっては姿を消してしまいました。
その理由は、騒音規制や排ガス規制の強化といった壁によるものです。

空冷エンジンは、構造上、水冷エンジンと比べてエンジンの温度の変化が大きいことから燃焼を安定することが難しいという課題があります。そのため、エンジンが温まっていない状態や温まりすぎている状態である場合、ガソリンをうまく排出することができず、排ガス規制の対象となってしまいます。
実際、1969年にホンダが初めて発売した小型乗用車ホンダ1300では、うまく熱を処理することができずトラブルを招き失敗している事例があります。

また、水冷エンジンに比べて音を増幅させてしまう課題もあります。空気で冷却する仕組みであることから、防音材などを敷き詰めることができず、良くも悪くも大きなエンジン音を生み出します。

こうした課題によって、今ではほとんどの自動車で水冷エンジンを採用しており、バイクでも水冷エンジンが主流になっています。

空冷エンジンを34年にわたって生産していたポルシェ911シリーズも、1997年秋には排ガス対策等のために水冷化に舵を切り、現在では生産打ち切りとなっています。

空冷は今アツい

水冷エンジンと空冷エンジンを比較してしまうと、性能面でどうしても空冷エンジンのデメリットが目立ち、昨今、空冷エンジンがほとんど採用されていない現状も理解することができます。

しかし、そんな空冷エンジンには性能だけでは語ることができない魅力があります。

空冷エンジンだからこそ感じることができる独特のオイルの匂いや、特有のエンジン音、アクセルを踏んだ時の快感、それらと車窓の融合、希少性、スタートの時のグイッと前に進むトルクの感覚、緊張感。

これらは、EV(電気自動車)時代に突入する中、これからの自動車の体験として非常に価値のある多幸感であるといえます。

そして"乗馬"的な価値に比重が変遷しつつある自動車シーンにおいて、こうした感性が揺さぶれる価値を提供できる空冷エンジンは、密かに人気を博し高騰傾向にあります。特に、ポルシェ911シリーズでは顕著に見られます。

電気自動車では生み出すことができず、空冷だからこそ体験することができる価値、これが今空冷が注目されている理由なのではないかと考察することができます。

まとめ

いかがだったでしょうか。

高いパフォーマンスを追い求めるのではなく、エンジンそのものの"味"を楽しむことができる空冷エンジン。

確かに、性能面では到底敵わない水冷エンジンですが、しかしながら空冷だからこそ堪能することができる奥深さに、いわばロングセラーといえるような高い価値を感じます。

100年以上の時間をかけて世界中の優秀なエンジニアが努力の末に生み出したエンジンは、豊かなトルクによって圧倒的な体験を生み出すことができることから、再評価されつつあります。

EV時代に突入しつつある昨今、まだまだガソリンエンジンが公道を走ることができる時代において、この流れはますます加速していくことでしょう。

空冷にしか味わうことができない独特のフィーリングを体験したい人は、自覚していないだけで数多くいるのではないでしょうか。

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