【911空冷ポルシェとは】人気ビンテージカーの魅力に迫る

「911ってなに?」

「911」とは、ポルシェを代表するモデルにつけられた数字です。
ポルシェといえば「911」といわれるほど、911モデルはフラグシップモデルとして君臨しています。

「911」のほか「718」など、ポルシェのモデルには数字が使われていますが、そんな数字の意味を知ることでポルシェへの理解を深めることができます。

今回は、ポルシェを代表するモデル「911空冷ポルシェ」について紹介していきます。

911空冷ポルシェとは

1963年「356」の後継者としてデビューを果たし、1964年から本格的に生産がはじまったポルシェのロングセラーモデルであるスポーツカーです。

911空冷ポルシェは、現ポルシェ創業者の長男であるフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェによってデザインされていて、以降も基本的な車体デザインと特徴的な丸いヘッドライン、後ろ置きエンジン・後輪駆動配置はデビュー当時から変わらず継承されています。

また、911モデルは1990年代まで空冷エンジンを搭載していました。
現代のほぼ全ての自動車が水冷エンジンを採用しており、水冷エンジンが1番主流のエンジン冷却方法であるのに対し、空冷エンジンは独特のエンジン音やオイルの匂いなどを楽しむことができる特徴的なエンジンです。

そんな911空冷ポルシェは、「901型」「930型」「964型」「993型」の4種類あります。

901型

901型は初代911モデルです。(1963年-1974年)

それまでのポルシェのモデルである1948年に登場した「356」の後継車が901型です。
この数字は社内コードのタイプナンバーを使用していたもので、以降ポルシェでは正式名称としてタイプナンバーが採用されます。

当時、開発コードは6気筒エンジンが「901」、4気筒エンジンが「902」と定められ、市販車として販売する予定でした。
しかし、フランスの自動車メーカーであるプジョーが、2桁目に0を使った3桁数字のネーミングを商標登録していたため、やむを得ず2桁目の0を1に置き換え「911」として販売を開始しました。

そのため、「911」の初代モデルは「901型」、通称ナローと称されていて、部品番号にも901が刻まれています。

全長4163mm。全幅1610mm。ホイールベース2211mm。トレッドは前1337mm、後1317mm。
リムは前後とも4.5J15in。タイヤは前後とも165HR15。
ブレーキ1系統でパッド面積前52.5cm2、後40cm2。オルタネーター490W。

930型

911 Carrera.jpg
Rémi Duvergey - http://en.wikipedia.org/wiki/Image:911_Carrera.jpg Public log for the file page., パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1453813による

930型は2代目911として名を馳せるモデルです。(1974年-1989年)

901型との最大の違いは、当時アメリカ連邦自動車安全基準 (Federal Motor Vehicle Safety Standard, FMVSS)の新しい衝突安全基準(バンパー強度規定Std215)に対応して前後につけられた大型の5マイルバンパーが装着されたところです。
衝撃を吸収する仕組みとして、欧州仕様は収縮式鋼管、北米仕様は油圧ダンパーを採用しました。

Hシリーズとして911、911S、カレラのスタンダード3種と911ターボの4種類が用意されました。
スタンダードのボア90mm×ストローク70.4mmの6気筒は排気量を2687ccに拡大。
排ガス規制に対応するため、欧州仕様は911Sの最大出力が175hp、北米仕様は160hpと、時代の変化に合わせて、エンジンを変更し社内のタイプ名が変わりました。

964型

964型は3代目911モデルで、顧客数の増大による新たな要求から、80%ものパーツを新製するといったアップデートを施しました。

デザインは継承しつつ、ボディの空気抵抗を最小限に抑え、サスペンションをトーションバースプリングからコイルスプリングに変え、エンジンが内径φ100mm×行程76.4mmで3,600ccに拡大、圧縮比11.3で250馬力/6,100rpm、31.6kgm/4,800rpmといった大幅な改良の末に最新の現代的なハンドリングを実現させました。

993型

993型は4代目911、空冷ポルシェとしては最後のモデルです。

エンジンは964型と同じく、内径φ100mm×行程76.4mmとなっていますが、272馬力/6,100rpm、33.6kgm/5,000rpmに強化、マフラー容量の増大、左右独立等長のエキゾーストの実現、リアサスペンションはセミトレーリングアーム式からマルチリンク式に、MTモデルは964型の5速から6速へと、大幅なアップグレードが施されています。

そんな993型のポルシェは、現在も最後の空冷フラット6を積んだモデルとして人気を博していて、中古車市場では世界的に高騰しています。

空冷ポルシェの魅力

空冷ポルシェの種類と歴史について紹介しましたが、ここでは30年以上も生産され続けた空冷ポルシェだからこその魅力について、エンジンとデザインに着目してみます。

エンジン

言わずと知れた空冷エンジンですが、空冷エンジンにも自然空冷式と強制空冷式の2種類あります。
自然空冷式は、冷却フィンに外気があたることによって冷却される構造になっていて、車体の構造を軽量化および簡易化できることからオートバイなどに古くから搭載されています。

しかし、ポルシェ911シリーズは強制空冷式。強制空冷式はエンジン動力で冷却ファンを常時駆動し、外気をエンジンの冷却フィンに当てることで冷却効率を高める方式です。自然空冷式と比べると複雑な構造になります。
ポルシェ911シリーズでは、車体の後部に空冷エンジンを搭載していて、大きな軸流ファンで強制的に冷却するシステムです。

空冷のエンジンサウンドは、水冷エンジンに比べて音が大きく、メカメカしい乾いた音が鳴り響きます。
シリンダーブロック部分に放熱フィンから共振音が発生するため、エンジン本体が鳴り乾いた重低音が特徴的です。

そして、ポルシェ911シリーズのエンジンに欠かせない要素であるのは空冷だけではありません。水平対抗であることも大きな特徴です。

水平対抗エンジンは、排出ガスの多さや、燃費の悪さ、メンテナンス面、生産コストがかさむことなどのデメリットが理由で、多くの自動車メーカーがこの水平対向エンジンを採用していません。
しかしポルシェは、水平対向エンジンの他にはない個性とパワーフィールを買ってメーカーのアイデンティティとなり、上述したデメリットはむしろポルシェの魅力となっています。

デザイン

ポルシェはもともと、フォルクスワーゲン・タイプ1を設計した技術者フェルディナント・ポルシェによって、デザイン事務所として1931年に設立されました。
戦時中にはドイツ国防軍戦車のデザインなども行った会社としての歴史もあります。

フェルディナント・ポルシェは、フォルクスワーゲン・タイプ1や戦車をはじめ、軍用トラクターや風力発電機なども手がけた多彩な人物として、後に「20世紀最高の自動車設計者」に選出されています。

そんなフェルディナント・ポルシェの長男であるフェルディナント・アントン・エルンスト・ポルシェも自動車デザイナーとしてポルシェ356を設計し、さらにまた彼の長男であるフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェはポルシェ911シリーズのデザイナーとして活躍し、さらにはポルシェデザインと呼ばれるブランドグループを創業するなど、歴史を遡るとポルシェ一族はデザイナー一族でもあったことが伺えます。

こうしたことから、911シリーズでもわかるように伝統的な自動車メーカーであるポルシェがデザインを継承し続けていることがわかります。
だからこそ、ポルシェ車はどれもポルシェだとすぐわかります。
現役ポルシェデザイナーである山下周一氏の講演記事によるとポルシェは「プロポーション」を大切にしていて、デザインDNAが備わっていると言います。
ポルシェの美しいフォルム、グラフィック、ユーザー・インターフェイス、カラー&トリム、全てにみられる一貫性かつ魅力は、プロポーションが本質ともいえます。

まとめ

いかがだったでしょうか。
911空冷ポルシェについて知らなかったことも多かったのではないでしょうか。

開発コードの3桁の数字を車両のタイプナンバーとして、どの世代の911なのかを理解することができると同時に、多くの名車を生み出したポルシェ。

50年以上も前の車なのにも関わらず、今でも絶大な信頼と人気を誇る空冷ポルシェだからこそ実現できる魅力が、空冷ポルシェ911の高騰の理由なのかもしれません。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事