911空冷ポルシェが今アツい!? 知る人ぞ知るそのエンジンの魅力とは

ポルシェチューン第一人者であり、国産車チューンで注目のプロモデット代表、小峰久雄さん。
小峰さんは、かつて1995年AW最高速で309.65km/hを叩き出した日本最速ポルシェの座に君臨した赤911ターボを手がけ、さらに1997年に手がけた964ベースでは、340km/hという最強の記録を達成した。
2021年現在もポルシェチューナーとしてポルシェの可能性を追求し続けている、そんな小峰さんならではの空冷ポルシェの魅力についてたっぷり語ってもらった。

空冷ポルシェの魅力に迫る

ーー現在もポルシェチューナーとして活躍されている小峰さんならではの空冷ポルシェの魅力とは何ですか?

小峰:ポルシェって水平対抗(エンジン)なんだけど、水平対抗っていうのは日本車で言えばスカイラインのようなものではなくて、物凄いトルク型エンジンなんだよね。だから、ターボなんてしたとき、すごく遠くまで出てくるからやっぱりその辺が1番の魅力だよね。
でも、ポルシェのエンジンを初めて開けた時は、これは大したことないエンジンだなって思っていたんだよね。

ーー最初はそうだったんですね

小峰:これはダメなエンジンだろ、って思って。それをだんだんチューニングしていくにあたって、馬力も出る、トルクも出る、そういうエンジンに変わってすごいなって。

ーー空冷ポルシェとの最初の出会いはどこだったんですか?

小峰:何年前だろう。20何年前かなあ。そのころはまだポルシェやってなかったの。日本車だけ。でもそれでたまたま雑誌の企画で谷田部でやるようになったの。それに出たいってことで、俺はそれを手伝うことになったの。だから何年前だろう……

谷田部とは

谷田部とは、かつて自動車雑誌などで最高速などの車両性能テストの場として一躍有名となった日本で初めての本格的な高速周回路サーキット。
約1.5kmの2本の直線を半径400mのコーナーで結んだ、一周5.5kmのオーバルコース。
円曲線部最大角度45度のバンクは、谷田部の最大の特徴であり、高速周回路の設計速度は180km/hとなっている。

小峰:最初にやったポルシェが日本最速の車になって、その車は丹下さんが買っちゃったの。その車は今もプロモデットのガレージにあるよ。

空冷エンジンのチューニング

ーーそんなポルシェの心臓部分であるエンジンをチューニングするとき、どんなことを意識しているんですか

小峰:俺はずっと日本車をやってきたから、日本車でやってきて得たことをポルシェにつぎ込んだの。とにかく、ターボに関してはヘッドがものすごく小さい。ポートという吸い込んでいく穴が小さいから独自にやってきたポート研磨によって、穴を大きくして空気が入る量を増やして馬力が上がるようにしたの。

ーー日本車の時はそれを当たり前にやってたんですね

小峰:そうそう。当たり前にやってた。本当に人間もヘッドが1番だと思うけど、車の速さに関してはヘッドが1番重要になってくる。

ーーなるほど。そういうのも全部まとめてレーシングの準備をしていくんですね。大体全部でどれくらいの準備期間がかかるんですか。

小峰:一台作るのに、エンジンからやったら4ヶ月、じゃ終わらないかな。エンジンができてからエンジン制作、エンジンじゃあもう一台やってください、したらはい、車入ってきました、エンジン下ろします、で、それをばらしました、そこから今度は吟味して、どういう仕様でやるかって決めて、それでヘッド周りから全部やって…。そんな簡単にはできない。
例えば、もしターボだったらターボで、やっぱり人と違うものを作りたいから、俺はこうするああするってなってくるから、結局作り物になっちゃうわけ。あるものを使うんじゃないんだよね。制作ものだから、結局時間は取られる。

ーーいろんなチューナーさんがいますが、4ヶ月以上かかるのがやはり通常なんですね。

小峰:それが通常だね。だからやっぱり俺の仲間なんかも、日本車をやっていて、今ポルシェやっている奴がいるんだよ。そいつは今一人でやっているんだけど、一人は一人の分しかできないからやっぱり時間がかかっちゃったって。万歳状態だよね。それでもそいつは一人でやってる。
だから、人のところで作った車と俺のところで作った車を比較してもらえれば1番わかるんだよ。何でこんなに時間がかかるんだろうって、多分思ってもらえると思うよ。

ーーこうやって良いものを作るために時間がかかっていることを理解してもらうのは嬉しいですよね。

小峰:だけど、俺からしてやっぱり時間がかかるっていうのは本当はよくねえんだよ。会社が回らないから。

ーーなるほどですね。ジレンマですね。

小峰:そうそう。だからやっぱり時間いくらでもかけてもいいから金払うっていうんだったらもっと良いものができる。アメリカで買えるものも、結局日本で機械が全部揃って、職人がいるから、3年もあれば日本でも作れるよ。

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