ポルシェチューンの第一人者が語るエンジン論

ポルシェチューン第一人者であり、国産車チューンで注目のプロモデット代表、小峰久雄さん。
小峰さんは、かつて1995年AW最高速で309.65km/hを叩き出した日本最速ポルシェの座に君臨した赤911ターボを手がけ、さらに1997年に手がけた964ベースでは、340km/hという最強の記録を達成した。
2021年現在もポルシェチューナーとしてポルシェの可能性を追求し続けている、そんな小峰さんならではの空冷ポルシェの魅力についてたっぷり語ってもらった。

ポルシェならではの独特なエンジンチューン

ーー日本車のメーカーやポルシェ等の外車など様々なエンジンを触ってきた中で、ポルシェのエンジンにしかないものってありますか。

小峰:日本車の直六ってありますよね。ジータのエンジンとか、セプラのエンジン、そういうのを直六って言うんだよね。その上で、クランプをブロックに全部入れて組んでいく。だけどポルシェの場合は、先にクランプを組んでいくんです。先にケースの中にクランプを積みます。

※直六とは、直列6気筒エンジンのことレシプロエンジン等のシリンダー配列形式のひとつ。シリンダーが6つ直列に並んでいる。

※クランプとは、クランプとは材料を作業台に固定する工具。

ーーこれってかなり大きな違いですか。

小峰:そうそう、ピストンも結局ポルシェの場合は積木なんだよね。シリンダーはシリンダーで1つずつ。クランプがあって、コンロッドつける。そしたらこうやって一個一個入れていくわけ。このサーフクリップっていうのを組んで、6個やっていくの。だからこれは慣れないと難しいんだよね。

※シリンダーとは、筒のこと。シリンダーの中でピストンが往復し、車の動力となる。

コンロッド(コネクティングロッド)とは、エンジンのクランクシャフトとピストンをつなぐリンク部品

ーー本当に積木みたいですね。ケースの中にクランプを積んでいくっていうのが。

小峰:クランプの合わせ目も2個あって1個に合わせるわけ。初めてエンジンを組んだ知り合いが、そこにシールドを載せないで組んだら、油圧とかが上がらなくて大変だったみたい。

ーーそれはどういうことですか。

小峰:そこからオイルが逃げちゃうんだよ。だからシールドさせないとボルトを二つ合わせて(スルーボルト)レシプロでいえば、クランクキャップボルトみたいなものなんだ。ボルトの中は油圧通るから、そういったものをしめて、油圧を保てるようにしているのね。スルーボルトっていうのにオーリングが入っているの。なぜ入っているかというと、油圧がとおる場所が3箇所あるんだよ。

※スルーボルトとは、モータやジェネレータなど回転電機の前ぶたと後ぶたとを締め合わせる長いボルトのこと。

※オーリングとは、流体を密封するための部品でO型のゴムの輪のこと。

ーー3箇所。

小峰:そう。だけど、シール材は全体的に塗ってパタンとしめて、それでスルーボルトを締める。

ポルシェチューンの第一人者が選ぶおすすめのエンジン

ーー直六、水平エンジンを調べていく中で「M64ユニット」を数多く見かけます。

小峰:「M64」っていうのが911カレラ2とかのエンジンで、それが1番人気のエンジンなんじゃないかな。

ーーポルシェの良さをもっと知ることができるという意味でも、小峰さんとしては「M64」よりもおすすめのエンジンってありますか。

小峰:それだったら、「80年代のSC 3L」だな。パワーはないけどレスポンスが凄く良い。3.2Lなんかはレスポンスはそんなにだけど、あんまり速くないよ。

ーーというと。

小峰:エンジンの付き、回転の上がりが良いんだよ。3.2Lやカレラなんかのエンジンよりもレスポンスが断然良い。

ーーポルシェを楽しむにはエンジンのレスポンスが重要になってくるんですね。ちなみに、今もSC 3Lをチューニングすることはありますか。

小峰:今はあんまりないけど、昔はよくチューニングしたよ。そのときはレスポンスがすごく良くて楽しかった。だからといって速いわけではないんだけど、こういうエンジンもあるんだなという感じで楽しめたんだ。ちなみに、ターボでもレスポンス悪いのはあるからね。笑

昨今注目の空冷エンジン、高騰の理由

ーー今、空冷ポルシェが高騰している中で、小峰さんとしてはなんで価値が上がっていると思いますか?

小峰:そうだな。結局海外だと思うんだよね。俺はバイクも集めているんだけど、こういうのも本当に高い。旧車も本当に高い。日本車のスカイラインとか32GRをすごい高額で買って行くんだよ。結局いいポルシェはみんな海外に流されて、球数がないわけだよ。欲しい人は買えない。

ーーなるほど、海外に流れているんですね。

小峰:そう。海外の相場が上がってると思うんですよ。だから、日本のオークションで買って持っていってしまう。結局、日本のオークションも高くなっちゃうってわけ。

ーー世界中で価値が上がっているってことですね。

小峰:そうだな。だからここにある964RSっていう車も2000万じゃ買えない。3-4000万はするんじゃないのかな。生産されていないからものがないってわけ。
俺もお客さんに言うけど、今売っちゃったらもう買えないよと。今高いから売れるかもしれないけど、本当にポルシェが好きで乗っているんだったら、やめとけって。乗ってろって。もう売ったら買えないから。

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