「水平対向エンジンってなに?」
海外の自動車メーカーの中では、ポルシェのみが採用している水平対向エンジン。
シリンダーと呼ばれる円筒の中をピストンが往復する部品の配置によって、車のエンジンは「直列エンジン」「V型エンジン」「水平対向エンジン」の3つに分けることができます。
一般的なエンジンユニットは「直列エンジン」や「V型エンジン」といったエンジンである一方で、「水平対向エンジン」は珍しいエンジンであるがゆえに、なかなか聞き慣れないという方も少なくないはず。
というわけで、今回はそんな水平対向エンジンについて深堀していきます。
水平対向エンジンとは
水平対向エンジンとは、その名の通り、左右対称に配置されたピストンが水平方向に対向して動くエンジンのことです。クランクシャフトと呼ばれる回転軸を中心にピストンが水平に配置されており、向かい合うピストンが水平方向に往復します。
ピストンが左右水平に移動する形がボクサーのパンチを打ち合う姿に似ていることから、「ボクサー・エンジン」と呼ばれています。
現在はポルシェとスバルのみが採用
世界の自動車メーカーではポルシェとスバルの2社が採用しており、海外メーカーではポルシェのみとなっています。
過去にはシボレー社が製造を手がけた「シボレー・コルヴェア」という車にて、空冷式水平対向6気筒エンジンを採用していましたが、1969年に生産が終了しました。
また、トヨタとスバルが共同開発した「トヨタ86」でも、水平対向4気筒エンジンが採用されています。
ポルシェ911では、過去のモデルから現在のモデルにかけて一貫して水平対向6気筒エンジンを採用しています。
水平対向エンジンの特徴
水平対向エンジンは、様々なメリットがありますピストンが水平方向に往復することから振動を打ち消しあうことができます。そのため、回転のバランスに優れ、安定性を実現することができます。
また、水平方向の設計であるがゆえに高さを抑え、重心を低くすることができるといったメリットもあります。
重心を低くくすることによって、スムーズで安定したハンドリングが実現され、独特なエンジンフィールを楽しむことができます。
一方で、横幅が長く余裕がない特徴から、設計上の制約が多いというデメリットがあります。高さを高くすることで水平対向エンジンの良さである低重心が損なわれることから、容易な構造ではありません。それによって、メンテナンスも難しく、また、熱損失の大きさから燃費も悪いといったデメリットがあります。
水平対向エンジンの希少性
水平対向エンジンは低振動と低重心を実現できる代償として、設計上の制約の多さがあり、実際に排気系の取り回しがエンジン搭載位置よりも高くなってしまい低重心というメリットが損なわれてしまうケースもあります。
それ以外にも、横に余裕がないことから様々な部品のレイアウトの工数が上がり、採算が合わなくなるケースがあります。
こうした理由から、各々自動車メーカーでは水平対向エンジンを採用せず、V型エンジンや直列エンジンを採用しています。
しかしながら、水平対向エンジンには水平対向エンジンにしか実現することができないエンジンフィールがあることから、採用しているポルシェやスバルはファンを大切にしていることを考察することができます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
設計上の制約というデメリットを乗り越え、ファンを楽しませてくれる水平対向エンジン。
他のメーカーが採用しないことから、その希少性には昨今価値が高まってきていると言えます。
"乗馬"的な価値に比重が変遷しつつある自動車シーンにおいて、独特なエンジンフィールを味わえることから、水平対向エンジンの今後に注目が集まるところです。